それは、明日からお盆休みが始まろうとする金曜日午後3時頃、始まった・・・。
腹イタである。
アタシは、子供の頃からよく下痢をする。便通が良いのはありがたいが、週2・3回はユルユルだ。なのでトイレ掃除は毎回やらねばならんのでメンドクサイ。パーーッと散るため満遍なく汚れるのだ。
いや、そんなことぁどうでもいいのだが、その腹イタの事である。下痢によるいつのもヤツとちょっと毛色が違う痛み方だ。患部は自分から見て左腰骨とヘソを直線で結ぶ真ん中辺り。そこがピンポイントで痛いッ。痛みは時間とともに段々とその範囲が拡がっていく。うんこしても治らない。
明日は土曜日、今日中に病院へ行かねば!早退しよ。
痛みでひん曲がった顔を向け、上役に事情を話すと「何か変な物食べたんじゃ?うんこ出した?」と半笑いしながら早退の許可を出してくれる。今は屈辱より痛みが優先だ。
職場近くの病院へ駆け込もうかと思ったが、まずはかかりつけ医に行くのがセオリーだろう。職場から30分位かかる。電車の中でどんどん痛みが増す。その痛みの範囲も拡がっている。更に吐き気もしてきた。恐らく顔は真っ青だ。席正面の乗客は、アタシを見て目を丸くしている。
アタシ御用達のかかりつけ医は、60才代のおじいちゃんだ。超難関有名国立大出なのに、地元密着の昔ながらの町医者だ。看護師さんも昭和のドラマに出てくる「婦長さん」って感じ。あなたのその温かな手で患部を撫でるだけで病気は治るのでは?と思わせる雰囲気のある方だ。そんなドクター1名、看護師1名という町の小さな内科医院、最新の医療機材なんて無さそう。
さて、問診。
いつから痛み出した?⇒ 前日も軽く同じような痛みがあったが、うんこしたら治った。今日も出したが治らない。昨日より酷く痛む。
今日はいつから?⇒1時間くらい前から。今、MAX痛い。痛い、痛いっす。
どんな痛み?⇒ピンポイントにズキズキっというか、下痢の時とは違う痛み(語彙力ゼロ)、吐き気もある。
血尿や血便は?⇒ありません。
その他、日ごろの便についてとか朝昼に食べた物とかを聞かれるが、取り立てて悪いものはない。
触診で患部を圧されたが、今アタシが感じている「腹イタ」以外の痛みはない。恐らく盲腸や腸捻転を疑っているようだ。しかし、血圧はいつもより高めだが正常範囲。血液検査でも体内に炎症があるような値は出ていないらしい。でもアタシは脂汗が出るほどの痛みがある。おじいちゃん、首を捻る。
「紹介状を書きましょう。タクシーで救急病院へ行ってください。」「はっ、はひ」
事務員さんから拾ってもらったタクシーが、なんと車体も内装も真っピンク。女性ドライバーも林家パー子並の全身ピンク色。話題性狙いで改造したであろう観光用タクシーに、こんな脂汗かいた腹イタ女を乗せるとはトホホな話だ。

さて、救命救急センター的な大病院へピンクのタクシーで到着。子供からは指を指され、大人は二度見している。しかし、アタシにはそんなのに構っていられない。とにかく腹が痛いのだ!
その大病院での担当医は、30歳前後の女医だった。マスクに覆われた顔は乃木坂にいるアイドルのようだ。そこでも同じような問診を受け、またもや血液検査のために血を抜かれる。
更に、学生のような医師に点滴を打たれたが、その注射針を刺す瞬間、「いち、にの、サン!」という、せーの!的な声が聴こえたのは、きっと腹イタによる幻聴だろう。(ちなみに後で点滴の薬名を調べたら生理的食塩水の類いだった)
問診→血液検査→結果判定まで冷房キンキンの待合室で痛みに耐えながら待つ。寒さか又は痛みによるものか知らんが身体が震えてくる。
1時間経過~
アイドル顔の女医から血液検査の結果、異常なし、身体からの炎症は見当たらないと告げられる。何故?こんなに痛いのに。
「CT撮って調べてみますか?」「何でもやってくださひ。」
「順番が来るまでお待ちください。」またまた冷房キンキンの待合室で待機。痛みより寒さの方が勝って来ている。
またまた1時間経過~
「では撮影室に案内します。」
造影剤の副作用やらの説明を受け、よくテレビで見るドーム型の機材で撮影。腕を万歳する形で撮影するのだが、五十肩が治ってて良かったと余計なことを考える。
「診断結果までしばらくお待ちください。」と、またもやキンキンの待合室で待機。
この待ち時間にふと思った。もし癌を宣告されたらどうしようか?親よりも先に逝ってしまうのか。アタシの葬式に参列してくれる友人はいるのか?数人の顔が浮かんだが、しばらく連絡もしていない。いやそれよりも緊急入院となったら着替えをどうしようか?独り身のアタシには近くに身寄りがいない。さきほど浮かんだ友人達はアテにならない。入院中のアタシを世話してくれる人がいない・・・。あっ、それよりもお金の持ち合わせはあったか?慌てて財布を確認すると、まず現金を入れていない。ちょっとした買い物はICカードで払うのを常としているからだ。クレジットカードも自宅に置いたままだ・・・。CTっていくら掛かるの?そんなこんな考えていると時計は20時を回っていた。実は、この段階で痛みレベルはMAXの100からして20くらいまで下がって来ている。
「帰りたい...。」喉元過ぎれば熱さを忘れる。
またもや1時間経過~
輪切りにされたアタシの身体が映し出される。初めて見るアタシの腹黒さを物語る臓物たち。この中にミスコピーされた細胞の塊があるのか!?
アイドル顔の女医より告げられる。「何も異常は見つかりませんでしたよ。」「へ?」肺から胃、痛みがひどい箇所、子宮、膀胱と医師二人掛かりで診断してもらったようだか、炎症もおデキも何も見当たらず原因が全く分からないという。
女医:「最初に痛み出した時から今はどうですか?」
アタシ:「違和感はありますが、痛みはほぼ無くなりました。スミマセンお騒がせして」と、頭を掻く。「よくあることですよ笑」
そうか、よくあることか。しかし、しかしですよ。腹イタの発生から6時間は経過しているのだよ。鎮痛剤も飲まずに自力で治ったのだよ。検査時間より待ち時間の方が長かったのだよ。しかも待合室が、病的に、べらぼうに、震えるほどに寒かったのだよ。救急ってナニ...?
結局、あの猛烈な痛みはなんだったのか?あの大病院のアタシのカルテには、その診断結果はなんと書かれたのだろうか?「ストレス性のナンチャラ」とか「気のせい」とかだろうか?あれから1週間ほど経つが、あれ以来痛みは出ていない。
真面目な話、今回のことで思ったことがある。独身者は日頃の準備が必要だということ。もしもあのまま緊急入院になったら独りで対応ができない。着替えもお金の引き出しも、色々な手続きも。もちろん、救急だけでなく災害の時も然りだ。
ああ、久しぶりに長文を書くと片腹がイタくなってくる。
~Fin~
追記:病院の支払いは次の日に清算に行きました。
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