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【愛の劇場】89歳と86歳のちくわ(後編)

⇒前編からの続き

【愛の劇場】89歳と86歳のちくわ(前編) - つぶやきよりチョイ長め

 

この入院騒ぎで、いろいろと考えさせられることがあった。親って大事だよね、という定番の感情だけではない。

年齢を重ね皺だらけても、母は「女性」なんだなということ。

その病棟は、起床したら寝間着から普段着に着替えるようになっており、入院中でも患者をだらけさせず、少しの緊張感を持たせる体制になっていた。母は髪を整え、薄っすら化粧をし、まずまずの服に着替え、アタシら面会人を迎えた。

そういうアタシは、マスクの下はドスッピンだ。母のこういうキチンしたところは見習わないといけない。年を取っても「女性」であることを忘れてはいけない。

 

10月中旬、そろそろ退院かという話が出始める。退院後のリハビリを通院にするか、又はデイケアに通うかという話になった。
母は言った。「退院したら暫くはお父さんと一緒に過ごしたい。デイケアにお世話になるのは少し日を置いてからにしたい。」と。
これを86歳の母は恥ずかし気もなく言うのだ。

なんか、これって両想いやん・・・。

両親は見合い結婚だった。なので恋愛感情たっぷりで結婚したわけではない。

それが、この騒ぎで二人の愛情というか、絆というか、二人にしかない何かの感情が湧き出て来たような気がしてならない。

アタシは、親の「男と女」という部分を見たくないと思っていたし、見た事もなかった。「男と女」ではなく、「お父さんとお母さん」であって欲しかった。

それが、今の二人の愛情の湧き出し方は「男と女」を超えた「熟した絆」とでも言おうか、なんとも言えない微笑ましさがあるのだ。

    「バレンタインに使われやすいハート」の写真

結局、退院は11月上旬になった。

実は一度、回復状況が良かったので退院を早めるという話があった。でも延びた。

延びた理由は、腰椎の容態が悪いという訳ではなく、入院中に安静にし過ぎて足の筋肉が減り、足元がおぼつかなくなったからだ。

そこで、足のリハビリを強化しようというわけだ。

一度退院が決まりそうな時は、父の顔がパァと輝いた。そして退院が延びた時は、またまた肩を落とした。⤵(←この記号のようなガッカリの仕方)

入院中は、母なりに日々のリハビリを頑張ったようで、入院する以前のレベルまで歩行ができるようになった。

そして病院の食事も効果があったのだろう。食事と筋トレ(リハビリ)はやはり繋がっているんだなぁとつくづく思う。

 

あれから無事に退院し、また日常が戻った。

以前、父に「お母さんが退院したら、お父さんがしっかり守らなよ!」と言うと「ガッテン承知の助」と昭和的な回答が戻って来たので大丈夫だろう。(軽く「オレ様」を感じたのは気のせいだろうか?)

母に聞いても、父はかなり気を使ってくれているようだ。

 

 

 

 

 

が!

 

先日、実家へ電話を入れると、何やらケンカをしたらしい。

母が、父が好きな黒いちくわ(いわし入り)ではなく、白いちくわ(たら入り)を買ってきた、というしょーーーーーーーもない諍いだった。

 

 ~ Fin ~