前回の続きとして
添乗中の緊急対応について書こう。
【前回】☟
この話は25年以上前の話
当時は添乗員付きのパックツアーの最盛期で、国内なら2泊3日、航空機利用(朝食2/昼食3/夕食2)全観光付で3万~4万円台が人気だった。
今はバスツアー日帰り1万円台(食べ放題付き)というツアーが人気のようだが、当時は宿泊格安ツアーで旅行する、というのが人気だった。
場所は忘れもしない、九州の某有名観光地での出来事。
このようなパックツアーには「集合写真」なるものを撮って売る、という事をしていた。(今もやってるのかな?)
現地には旅行会社と提携している団体専門の写真屋さんがスタンバイしている。
そういう時の添乗員は、ひな壇にお客さんを並ばせる事に専念するのだが、その時、3段目の女性が後ろに倒れた!!
足を滑らせて倒れた?・・・ように見えた。
どうやら違うようで、お連れの方曰く、普通に立っていたが目が回るような感じになって倒れたとのこと。
さて救急車到着後、添乗員は一緒に乗っていくのか?
正解は乗っていかない。
一人のお客様より数十名のお客様が優先される。
添乗員がいないと、食事やホテルの精算やその他ケアが出来ない。
バスガイドに託すことも出来るが、前回書いた通り、バス会社と旅行会社は会社が違うので責任を持たせられない。
ただこの時、ツアーは2台連行(1号車、2号車)で、もう一人添乗員がいたためアタシはお連れの方(友人)と病院へ一緒に行くことになった。
病院に到着すると、すでにストレッチャー上で意識がない状態で救急対応中。
倒れた原因は「脳内出血」
看護婦(当時)から状況は良くないので、家族を呼ぶように言われる。しかし関東から九州までの距離だ、間に合うかどうか・・・。
旅行会社から息子さんへ連絡をしてもらい、すぐ来て頂く。
アタシは旅行会社の担当者から息子さんが乗ってくる便と息子さんとのミートの方法の確認。
午前中に倒れて、その日の夜に亡くなった。
息子さんはなんとか間に合った。
旅行に行ってくるね、と言って喜んで出て行ったのに、まさか…とおっしゃる。
横にいるアタシも辛い。
更に、任せたもう1人の添乗員とお互いの状況交換をし、担当していたバスのお客さんに安心してツアーを楽しんで貰うよう伝えてもらう。
あとは添乗員としての仕事はもう何もない。
ご遺体の移動などの手配はご家族に託すしかない。
ちなみに国内旅行傷害保険は、あくまでも「ケガによる補償」なので病気での補償はない。
(海外旅行保険は病気によるものも補償)
さてツアーはアタシ抜きで進んでいる。
アタシはJRで追っかける⇒ツアーに合流という流れである。
この時、携帯電話が普及しておらず連絡は公衆電話でやり取りしていた。
それが当たり前だったので大変だと思わなかった。
基本的に最終判断は旅行会社の担当者であるが、
今思えばアタシらは指示待ちではなく、状況説明をした後は、こちらからこうしてもいいか、と確認してGOかNOか判断してもらっていた感じ。
今でも急なトラブルがあっても冷静でいられるような気がする。
若い時に経験したことって決してムダではない、というセリフはこの年齢になってやっと言える。
あの頃はとにかくガムシャラだった。